2022年8月8日(月)、北海道大学苫小牧研究林(面積2715ha:札幌ドーム約490個分)においてSSH選択生徒および科学部の生徒15名がフィールドワークを行いました。この日は1日かけて①幌内川の魚類の生態調査、②森林の階層構造の調査、③森林内のノネズミ調査、④土壌・林床の観察の4つのプログラムに取り組みました。
生徒たちはまず苫小牧研究林の中を流れる幌内川の源流近くまで移動して、川の中に住む魚類調査について学びました。幌内川にはニジマスやサクラマスの他、実にさまざまな魚類が生息していることが分かりました。研究林で働く研究者の方々はこれらの魚を捕獲した後、魚体内にマイクロチップを埋め込むことで生態調査のためのデータを集めているとの説明がありました。生徒たちが良く見ると川の中には等間隔でマイクロチップのデータを読み込むためのセンサーが設置されているのを見つけることができました。
その後、川の中に入り実際に魚類の捕獲を行い、体内に埋め込まれたマイクロチップの確認を行いました。マイクロチップを読み込むと個体識別番号が表示され、個体ごとの生活パターンなどの分析にも役立つとの説明を受けました。
午後からは森林の奥に足を踏み入れて調査を行いました。
森林内の階層構造の調査では、森林内に設置されたゴンドラに乗り、30mの高さから森林の階層構造を観察することができました。林床から林冠まで移動する間に明るさが徐々に変化することを体験できた他、森林の上部と下部では葉の構造に違いがみられることに気が付くことができました。
ネズミの個体数調査ではドングリなどの木の実の豊凶が個体数に影響を与えるとの説明を受け、生態系内での生物の関係性について考える機会を得ることができました。今回は倒木に沿って仕掛けていた罠に1匹だけ体長12cmほどのノネズミが捕獲されていました。これら調査対象になっているノネズミはマーキングされたのち、再び森林内に戻されました。
土壌・林床の観察では、苫小牧研究林は過去に何度も噴火している樽前山の火山堆積物の上に存在する森林であることの説明を受けました。そのため土壌の水はけがよい一方で、土壌の厚さはそれほどでもないために木が深く根を張ることができず倒木が多く見られました。研究者の中には森林内部の地表徘徊性甲虫類の研究をされている方もおり、月ごとに甲虫類の個体数変化を調べ、温暖化の影響などを調べている方もいました。
1日を通して行われた今回のフィールドワークにおいて、生徒たちは数多くのことを学ぶことができました。特に今回はフィールドを案内して下さった研究者の方々から、生徒たちに対して多くの問いかけがあったことから、問いを考えることが研究につながっていくという事を実感することができました。