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動物倫理と福祉に関する講演会を実施しました

2023.09.26

 9月25日(月)SSHとMLPを選択している高校2年生を対象に本校NLinkにて標記の講演会が開催されました。
 この講演会は、他分野の研究グループが医療・科学のテーマで互いに交流するとともに、専門の研究者の講演を聞く中で生きた知識を習得することを目的に開催されています。講演会の前に、研究倫理をAPRINで学び、さらに動物実験の必要性についての肯定的否定的両面の意見と家畜動物の福祉に関する新聞記事を読んで参加しました。

 はじめにアイスブレイクとして自己紹介と研究テーマ紹介を行い、実験用の豚の飼育現場の動画を見て何を、なぜ行っているかについてディスカッションを行いました。そして東北大学大学院医学系研究科・医学部名誉教授である笠井憲雪先生から、➀動物事件の目的、②動物実験に対する考え方、③動物実験の再現性~適切な実験のために~、④動物実験で配慮すること~痛みの軽減~、⑤コンプライアンスの遵守について講演いただきました。

 次いで北海道大学大学院医学研究院附属動物実験施設助教であられます土佐紀子先生から北大の動物実験施設での動物の管理方法やラットやマウス、マーモセットの飼育状況や動物の特性を生かした環境エンリッチメントについてお話しいただきました。

生徒の感想(一部略)

 今回の講演会で最も印象に残ったのは、動物実験で得られたデータを主に人間へ外挿するというところで、その外挿の段階で誤ってしまうと薬害などにつながるということ、また科学には単純な系の中で厳密な条件が設定されるのに対し、動物実験は複雑な系で曖昧な条件であるということによる再現性の低さがあるということです。動物実験への反対の意見として、いくら動物実験をしても薬害はなくならないというものがありましたが、薬害が起こってしまうのは動物実験の過程で条件を絞りすぎている、もしくはうまく対象を導く実験となっていないこと、また外挿の時点における人への適用のところでミスリーディングがあるのかなと思いました。

 この外挿というのは数学でいう関数に似ていて、その定義を誤ってしまうと目的とは別の結果が出力されてしまうのに加えて、こういう動物への適用では健康や命に直接関わるような望んでいない出力が生まれてしまうことに恐怖を覚えると同時に、この外挿という考え方の汎用性を感じました。外挿とは、人間に直接手を加えるのではなく動物として置き換えて実験することであり、そこから目的のデータを得るという物だと思います。それに対して、AIは人工知能というように、人間に近い近似的なモデルを強化学習に近い形でつくることで、人間の思考のプロセスをそこから得ることができる実験方法の一つなのではないかと思いました。

 (中略)大切なのは実験動物などの様々な犠牲の上で、今の人間の生活が成り立っているということに感謝の気持ちを持ちながら、日々「人間」として生きていくことだと思いました。 最後になりますが、今回の講演会は色々な考えを巡らせるきっかけとなるようなトピックが多く、とても楽しみながら聴かせていただきました。こうした機会を用意してくださり、ありがとうございました。